その申請書はどうやって書いたらいいですか?
→このようなご相談にお答えします。
ナカムラリョウ
・小規模事業者持続化補助金の申請書の書き方・ポイントがわかる。
ほかに使える補助金は何かないの?という方には、こちらの記事で「補助金・助成金の探し方」を解説しています。

1.小規模事業者持続化補助金とは
1−1.制度について
「小規模事業者持続化補助金」は、中小企業・個人事業主などの「販路開拓」にかかった費用の2/3、原則上限50万円が国に補助される制度です。
2013年にはじめて募集され(当時は小規模事業者活性化補助金という名前でした)それ以来毎年募集されています。
1−2.対象となる事業
申請書類の説明には「経営計画に基づき実施する、販路開拓等のための事業」と書いてあります。
つまり、まず「経営計画」があって、その計画に基づいた「販路開拓等」の取り組みが対象となります。「経営計画」と「販路開拓等の取り組み」の2つの書類が必要です。
1−3.販路開拓等の例
販路開拓の取り組み例として、次のようなものが挙げられています。
(→スクロールします)
(1)広告宣伝 | ・新たな販促用チラシの作成、送付 ・新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、ウェブサイトでの広告) ・新たな販促品の調達、配布 ・新たな販促用チラシのポスティング |
(2)集客力を高めるための店舗改装 | ・新商品を陳列するための棚の購入 ・ネット販売システムの構築 ・(買物弱者対策事業において)移動販売車両の導入による移動販売、出張販売 ・店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む。) |
(3)展示会・商談会への出展 | ・国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加 ・国内外での商品PRイベントの実施 |
(4)商品パッケージや包装紙ラッピングの変更 | ・新商品の開発 ・新商品の開発にあたって必要な図書の購入 ・ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言 ・新商品開発にともなう成分分析の依頼 |
また、販路開拓の取り組みとセットで行う場合に限って、次のようなものも対象になります。
サービス提供等プロセスの改善 | ・業務改善の専門家からの指導、助言による長時間労働の削減 ・従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装 |
IT利活用 | ・新たに倉庫管理システムのソフトウェアを購入し、配送業務を効率化する ・新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する ・新たに POS レジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する ・新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する |
なにをしたらよいかわからないという方は、次の記事も参考にしてください。

1−3.申請先
商売をしている地域によって申請先が異なっていて、申請書類も若干異なっていますのでご注意ください。
ちなみに、いずれも会員になっていなくても申請ができます。
●商工会議所地域:日本商工会議所
●商工会地域:各都道府県にある商工会連合会
みなさんの地域が、いずれに該当するかわからない場合は、以下からお近くの商工会・商工会議所を検索してみてください。
2.書類の書き方
2−1.事前準備:公募要領と申請様式をダウンロード
次の①、②を使って、申請書づくりの準備をしていきます。
*「①申請書類」は地域によってひな型が異なるため、ご注意ください。
②「オリジナルワークシート」
A3サイズで印刷するとよいです
まずは、オリジナルワークシートをもとに解説していきます。
ナカムラリョウ
3.経営計画書の作成
3−1.そもそも経営計画って?
ここで求められている「経営計画」って、そもそもなんでしょう。
経営計画とは、自社が将来「ありたい」姿に到達するための「道筋」を示したものです。
つまり将来どうなっていたいか、そしてそのために、いつ何をしてその将来像に向けて近づいていくか、といった内容を説明したものです。
なのでまず、1〜3年後の自社のありたい姿「将来像」を考える必要があります。
あまり短期的すぎると、その間にできる取り組みが限られてしまいます。また、先の未来すぎると予測が困難になるので、1〜3年後が望ましいです。
具体的には、1〜3年後の
・売上や利益の目標金額 例:◯年後までに、売上◯◯円を達成する、売上◯◯%増を実現する、といったこと
・市場や社会でのポジションなど対外的評価 例:業界のリーダーになる、地域への雇用をつくり、地域へ貢献する
・事業運営の将来像 例:社員一人ひとりの生産性を50%向上させる
・組織と人のあり方、関係 例:個人の頑張りに報いることができる評価制度をつくる
などについて考えて言葉にします。
そして「オリジナルワークシート」1枚目の右下にある「自社のありたい姿」に整理してみましょう。
3−2.現状の整理
次に現状整理です。
夢に向かうためには「今どうなっているのか?」といった現状を把握することが重要です。
「3−3.自社について考える」「3−4.自社をとりまく環境について考える」の2つに分けて現状を整理しましょう。
3−3.自社について考える
まずは、自社の今の現状について考えましょう。今とは、この文章を読んでいるまさに今です。
今現在の自社について、「5W1H」の切り口で考え「オリジナルワークシート」に整理していきます。
- いつ(When)→いつお客様に価値を提供していますか?
- どこで(Where)→どこでお客様に価値を提供していますか?
- だれに(Who)→お客様は誰ですか?
- なにを(What)→お客様になにを(どのような価値を)提供していますか?
- どのように(Why)→お客様にどのように価値を提供していますか?
- なぜ(Why)→なぜお客様は、あなたを選ぶのですか?
①いつ?
お客様が、みなさんの商品・サービスを買ってくれるのはどんなときでしょうか?お客様の気持ちになって考えてみましょう。この時、具体性が大切です。
例えば飲食店であれば、「昼間」「夜」「いつでも」「お腹がすいた時」などといった表現は、抽象的すぎます。「観光の通りすがりの日中」「仕事帰りの夜」「お祝いごとに出席した後に」など、利用シーンが具体的にイメージできるくらいまで、具体的に表現してみましょう。
②どこで?
お客様が、みなさんの商品・サービスを買ってくれるのはどこででしょう?お客様の気持ちになって考えてみましょう。これも具体性が必要です。
「店内で」「お客様先で」「インターネットで」といった表現は、あまり具体的ではありません。お店であれば、「駅から5分ほどの繁華街で」「国道沿いの、座席数が30席ある路面店で」というように、具体的に表現してみましょう。
③だれに? *重要
どういった方が、みなさんの商品・サービスを購入してくれているのでしょうか?顔が思い浮かぶくらいまで、想像してみましょう。これも具体性です。
「男性」「女性」「サラリーマン」「主婦」「子供連れの家族」「30代」といった表現では、お客様の顔まではイメージできません。「甘いものに目がない男性」「旅行が好きな熟年夫婦」「時間に余裕のある、近所に住む主婦グループ」といった、顔が思い浮かびそうなくらい具体的な表現を心がけましょう。
④なにを?
みなさんが提供しているものは、確かに商品ですが、お客様が買ってくれているのは、商品ではありません。商品を通して得られる「価値」を購入しています。
これがわかると「食事」「そば」「宿泊」「おみやげ」といった表現ではなく、「急いでいる時に早く食べられる食事」「地域でしか味わえない特産品」「明るい雰囲気で宴会を盛り上げる場を提供」といった、具体的な表現に変わります。ぜひ考えてみてください。
⑤どのように?
どのように商品・サービスを提供しているか?といった内容です。対面、インターネットといった提供方法だけではなく、「対面でセールスポイントを伝えながら」「インターネットモール◯◯市場の◯◯カテゴリで販売」など、具体的な表現に気をつけて下さい。
⑥なぜ? *最重要
他にも色々な商品・サービスの選択肢がある中で、お客様からみなさまが選ばれている理由が必ずあります。それをぜひ、お客様の気持ちになって想像してみて欲しいのです。
「安いから」「品質が良いから」は、理由としては弱いです。他にもっと安いところ、他にもっと品質の良いものが世の中に存在しているからです。そうではない、本当の選ばれている理由をぜひ、考えてみてください。
例え価格や品質だとしても、「◯◯地区の中で安いから」「◯◯と比べて品質が良いから」といった他と比較してどう、という表現をしたいところです。
ここまでが、自社の取り組みに関する現状整理です。再三お伝えしていますが、ポイントは表現の「具体性」です。
3−4.自社をとりまく環境について考える
つぎに現状把握のもうひとつ、自社「以外」の状況についてです。これは、「顧客」と「競合」の2つに分けて「オリジナルシート」に整理します。
⑦顧客
先ほど「③だれに」で具体的なお客様の顔を思い浮かべられたでしょうか?
そういった方は、現在「何名(何社)くらいいますか?」「どういったところにいますか?」「増えていますか?減っていますか?」「どういった傾向がありますか?」こういった内容を、思いつくまま記入してみてください。
⑧競合
つづいて競合です。
これも同様に「③だれに」で思い浮かべた方の気持ちになって考えてみます。
その方は、「みなさんの商品・サービスがなかったら、代わりにどうしていたでしょう?」それを提供している人がライバルです。
「その代わりの商品・サービスは、誰が提供しているでしょう?」「そうした方は増えていますか?減っていますか?」「その提供者は、どういった取り組みに力を入れていますか?」こうしたことを、整理してみてください。
ここまでで、現状整理は終わりです。
3−5.今後の経営の方向性は?
ここからは、「オリジナルシート」の2枚目を活用します。
ここまで、将来の「ありたい姿」と、今の「現状」を整理してきました。ここからは「ありたい姿」を実現するため、現状から将来にむけて、どういった方向性で進んでいくか?を具体的に考えます。
考えられる方向性は沢山ありますが、今回の補助金の主目的は「販路開拓」です。つまり方向性は「自社の強み」を活かして「顧客を増やす」ことを第一に検討します。
自社の強みとは、先ほど「⑥なぜ」で考えた、自社が選ばれる理由です。これと先ほどの「⑦顧客」「⑧競合」の状況を勘案して、「ありたい姿」を実現するための経営の方向性を検討します。
経営の方向性、つまり今後「どういったお客様」に対し「どういった商品・サービスを提供していく」ことで、「目標」を達成し、「ありたい姿」を実現する、という事業の通り道を考え、言葉にしておきましょう。
3−6.具体的な取り組みを考えよう
ここまでを踏まえて、今後具体的に実行する「取り組み内容」と「取り組みスケジュール」を考えます。具体的な取り組みとは「1−3.販路開拓等の例」にあるような、目標を達成するための具体的な取り組みです。
取り組みと合わせて、いつ頃どのように行うのか?といったスケジュールも考え、オリジナルシートの2枚目に書きましょう。
4.経営計画書【様式2】に清書しよう!
ここまできて、ようやく申請用の様式に書いていきます。
一般的な文章表現の注意点を知りたい方は、こちらの記事も合わせて読んでみてください。

淡白なひな型ですが、自由に枠を広げて記載してください。2〜3枚ほどのボリュームが適量です。そして、文字ばかりではなく、図表・写真などをどんどん活用して見やすく表現してください。あと、表現は「ですます調」の方がいいです。
ここで参考までに、中小企業庁が公開しているサンプルを紹介します。
事業計画書サンプル(中小企業庁)
ナカムラリョウ
4−1.企業概要
この欄には、先ほどまで考えてきた「①いつ」「②どこで」「③だれに」「④なにを」「⑤どのように」の内容を整理して転記してください。
この時、ポイントとしてこれまでの「顧客層」「商品・サービスの価格帯」「ビジネスモデル」「販売促進方法」や「売上・利益の状況」を意識して書いてください。
4−2.顧客ニーズと市場の動向
この欄には、先ほどまで考えてきた「⑦顧客」「⑧競合」の内容を整理して転記してください。
その時要件通り、「顧客ニーズ」と「市場の動向」にそれぞれ項目をわけるとよいです。
またポイントとして「どのような客がどのような時に購入しているのか」「今後どのようなものを消費者は望んでいるか」「競合と自社との違いはなにか」を意識して書いてください。
4−3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み
この欄には、先ほどまで考えてきた「⑥なぜ(Why)」の内容を整理して転記してください。
強みとは「立地」「歴史」「品質」「信頼」「○○力」のように必ず名詞であらわされます。自社がお客様から選ばれる理由をいくつかとらえ、書くようにしてください。
4−4.経営方針・目標と今後のプラン
この欄には、見出しに忠実に「経営方針」「目標」「今後のプラン」をそれぞれ書いてください。
経営方針は、「経営の方向性」について整理して記載してください。
目標は、「ありたい姿」を具体的に数字で書いてください。
今後のプランは「具体的な取り組み」とその「スケジュール」を書いてください。
ナカムラリョウ
5.補助事業計画書【様式3】を書こう!
つぎに「補助事業計画書」です。これは、今回実際に取り組もうとする「販路開拓の取り組みの内容」です。特に、経営計画書の「4.経営方針・目標と今後のプラン」に沿った取り組みであることが求められます。
これも自由に枠を広げて記載してください。図表・写真などをどんどん活用して見やすく表現してください。
補助事業の「具体的内容」とは、「ターゲットとなる顧客層」「商品・サービスの説明」「価格帯」「流通のさせ方」「販売促進」などに関する内容です。
実施の手順と、実施に伴い予想される効果(売上・利益への貢献)の記載もあったほうがよいでしょう。
◯◯という客層に対し、◯◯という商品を提供。販売促進のため、◯◯に関するチラシを◯◯枚作成し、◯◯に配布する。その効果として、◯◯名の集客効果が見込まれ、◯◯円の売上向上が期待される。
といったところまで。とにかく具体性が大切です。
また「生産性向上」のための取り組みが認められています。
例えば、・導線確保、整理スペースの導入のための店舗改装、・POSレジ導入による売上管理、・経理会計システムの導入による決算効率化
といったものも、該当になりますが、ただしあくまで「販路開拓の取り組みに加えて」行うことが必要です。これも同様に、取り組んだ効果も含めて具体的に記載しましょう。
6.審査のポイントに沿って確認!
審査のポイントは、
①自社が適切に分析できているか?
②今後の経営方針は、顧客や競合の状況からみて適切か?
③今回補助を受ける取り組みは、実現可能か?また工夫がなされているか?
といった点が、大きな評価の視点となっています。審査員は、どこに住んでいてどんな生活をしている方か一切わかりません。そうした方にもわかりやすく、納得してもらえるように、くれぐれも具体的な表現を心がけましょう。
7.さいごに
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?バッチリ書けそうでしょうか?
この申請書は、計画の作成や販路開拓等の実施の際、商工会や商工会議所の指導・助言を受けられます。
ただし、商工会・商工会議所の「専門家派遣制度」を活用していただくと、私が直接訪問して具体的なアドバイスや添削などをさせていただくこともできますので、全国どこでもお近くの商工会・商工会議所へお気軽に相談してみてください。
ナカムラリョウ
またほかにも、経営に役立つ補助金・助成金はたくさん用意されています。
次の記事では、その探し方を解説していますので、自社の経営に役立つ補助金・助成金を探してみてください!

そもそも文章表現が苦手で…という方は、この記事もどうぞ。

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